国の重要文化財
国の重要文化財指定の
松坂屋コレクション
2008年から一般公開が始まった松坂屋コレクションは、わが国の染織研究者や学術研究者の大きな注目を集めました。そして、公開から3年後の2011年、江戸初期の小袖1点が国の重要文化財に指定されました。続いて2018年には、桃山~江戸初期の能装束4点が同様に重文指定となりました。
染分綸子地御所車花鳥文様繍箔小袖 そめわけりんずじごしょぐるまかちょうもんようぬいはくこそで
江戸時代 2011年度重文指定
地を紅・黒・白に染め分け、松や御所車、鳳凰をはじめ、種々の文様を金摺箔、刺繍、絞りの技法で表す。
江戸時代初期に流行した「慶長小袖」は、複雑な区画構成の中に、精緻な文様を集合的に配置することが特徴のひとつにあげられる。本小袖にはそれがよく表されており、その意匠の見事さ、保存状態の良好さにおいて特筆すべき一領である。
紺地菖蒲蓬菊桐文様小袖 こんじしょうぶよもぎきくきりもんようこそで
安土桃山時代 2018年度重文指定
子供用の小袖。菖蒲と蓬の葉を組み合わせた文様を全体に配して間に菊花を散らし、胸の二箇所と背中に桐紋を置く。柔らかく浮いた渡し繡いの技法や、文様の途中で色を変える表現は、安土桃山時代の特徴を示す。桐と菊は本来天皇家の家紋として最高位の紋章であったが、功労者が賜り、ステータスシンボルとなった。安土桃山時代には豊臣秀吉が桐と菊を用いたことで知られている。襟の裏地に「金春して」と墨書きがあり、能楽の一派でシテ方の金春家に伝来したことがわかる。秀吉は金春家を庇護していたので、秀吉から能装束として拝領した可能性も考えられる。
萌黄地紋入格子縞藤文様片身替厚板 もえぎじもんいりこうししまふじもんようかたみがわりあついた
安土桃山時代 2018年度重文指定
白地に萌黄を主体とした多色の糸で格子を織りあらわした半身と、萌黄と白の縞地に白糸で藤唐草を織りあらわした半身とで片身替わりとした一領。片身替わりは安土桃山時代に好まれた衣服の意匠。金春家旧蔵。
薄黄地紋入格子鱗文様肩裾厚板 うすきじもんいりこうしうろこもんようかたすそあついた
安土桃山時代 2018年度重文指定
肩裾に格子模様、腰部分に鱗文様を織表す。肩裾文様は安土桃山時代に流行した衣服の意匠である。能楽シテ方の金春家に伝えられた一領。寸法が小さく振袖に仕立てられていることから、子方(子役)の装束に用いられたと推測される。
茶地紋入格子文様厚板 ちゃじもんいりこうしもんようあついた
江戸時代 2018年度重文指定
全体に浮紋織で格子文様を表す。さらに、格子文様の縦筋と横筋の交差する部分には、花菱文様を表す。身幅と袖幅から、江戸時代初期の厚板と考えられる。表裏ともに仕立て替えがされており、特に袖の部分にその痕跡が認められる。仕立て替えを行いながらも大切に用いられたことが窺える。