メイドインジャパンの誇り
それは“ものづくり”のDNA

文/近藤マリコ
2021/7/10

VERMICULAR

バーミキュラ ライスポット

無水調理鍋の代名詞になった、
0.01ミリの精度

セレブリティやグルマンがこぞって年単位でオーダーを待ち続ける“無水調理鍋”があると聞いたのは、10年ほど前だったか。しかもその会社はもともと、ドビー機と呼ばれる繊維機械を製造する鋳造メーカーだという。戦前からある昔ながらの町工場が、あたらしい時代にむけたブランディングで“鍋”に挑戦したのである。鉄を溶かして形をつくる「鋳造工程」と、鉄の鋳物を精密に加工する「精密加工工程」の両方の強みを生かし、世の中にないものをつくり出そうと模索した結果、無水調理鍋の商品開発につながったのだそうだ。製品のひとつひとつに熟練した職人の手仕事が必要不可欠。職人の絶え間ない努力の結果、蓋と鍋の間の密閉性を0.01ミリの精度まで高めて加工することで、無水調理が可能になり、素材の味や栄養素を引き出して、本当に美味しい料理をつくることができる鍋が完成した。

素材本来の味を引き出す鋳物ホーロー鍋として、理想的な無水調理ができるバーミキュラの名を広く伝えた商品。

この話を聞いた時、何十年も前に日本車の車体メーカーに取材したことを思い出した。
ヨーロッパの某高級車は塗料を20回塗り重ねるのに対し、その日本車は5回塗っているだけだという。数字だけ見れば多く塗るヨーロッパ車が優れていると思われがちだが、そうではない。日本車は車体の表面がなめらかで凹凸がきれいに研磨されているため、塗料を5回塗れば美しく仕上がる。対してヨーロッパ車は車体そのものに凹凸があるので、塗料を何度も塗り重ねて塗料の厚みで平らにしているというのだ。これは、基本の技術を大切にするものづくりの国・日本を象徴する話だなと思った。そして、バーミキュラの0.01ミリの精度にも同じことがいえるのではないか。工業生産と職人の両方の技術が組み合わさることで、世界に誇る密閉度の高い鍋が出来上がったに違いない。

炊飯はもちろん、
あらゆる調理ができるライスポット

バーミキュラが無水調理鍋としての存在を確立し、2010年の発売から販売数累計20万個を突破したのが、今から5年前の2016年。ちょうどその頃、新発売となったのが、「バーミキュラ ライスポット」である。ごくわかりやすく表現するなら、進化したバーミキュラの鍋と、IH加熱する「ポットヒーター」を組み合わせたもの。鋳物ホーロー鍋の遠赤外線効果と鍋を包み込むような、かまどの炎を再現した立体的な加熱ができることがなによりの特徴だ。
そしてこのライスポットの開発者は本当にごはんの美味しさを大切にしている人だなと思ったのは、保温用の蓋をあえて付けなかったという点である。ごはんは炊き上がった瞬間がもっとも美味しく、炊飯器の中で保温されたままだと、時間がたてば蒸れて味が落ちていくということは、食事に気をつかう人なら誰でも知っている常識だ。それでもブランドの明暗を分ける炊飯の新商品に蓋を付けないという決断は、とても大きな挑戦だったのではないか。新商品発売から5年がたった今、その決断が正解であったことは、ライスポットの売れ行きが物語っている。

お米ひと粒ひと粒がしっかりと主張した味わいは、一度食べたら忘れられない。炊き上がりの香りの良さもご馳走のうち。

炊飯器としての機能だけでなく、調理器具としても有能なライスポット。バーミキュラで作るすべてのメニューが理想的な火加減で調理できる。
無水調理・ロースト・炒め調理、発酵・オーブン調理、30℃〜95℃まで1℃単位で温度設定できる低温調理も失敗知らず。

〈バーミキュラ〉

ライスポット 税込87,780円

/本館6階

※数に限りがございますので、品切れの際はご了承ください。

コピーライター

近藤マリコ

Mariko Kondou

コピーライター、プランナー、コラムニスト。日本の古いコト・ヒト・モノに囲まれて育ち、その反動でフランス一辺倒となり渡仏を繰り返し、現在に至る。工芸・着物・伝統芸能、職人の世界観、現代アートや芸術全般、日仏文化比較、紀行文などのテーマを主に手掛ける。やっとかめ文化祭ディレクター。