おせち料理の新潮流は江戸前寿司の伝統と挑戦から生まれる
- 文/近藤マリコ
- 2020/09/29
銀座 鮨青木
壽 三段重
2021年に創業50年を迎える
江戸前寿司の銘店
28年前のこと。当時勤めていた会社の上司が、銀座でお寿司をご馳走してくれるというので、喜び勇んで暖簾をくぐったのが、『鮨 青木』(現・銀座 鮨青木)でした。握りだけを頼むお客様から、つまみとお酒をひたすらオーダーするお客様まで、それぞれのテンポに合わせて、ご主人の小気味の良い仕事が美しいなぁと思ったのでした。
「“寿司ダコ”って知ってるかい?」と上司が言うので、わたしがきょとんとしていると、お寿司を握りながら「今はそんなこと言う人、少なくなりましたね」とご主人。 寿司屋での接待で、クライアントに体を向けていると必然的に片方の肘がカウンターに当たることになり肘にタコができる。上司いわく“『鮨 青木』のような店で寿司ダコができるようになったら超一級のビジネスマンだ”とのこと。その話を聞いてから、この貴重な機会に銘店を味蕾で感じようと必死になったことを覚えています。
こうして江戸前の仕事ぶりが多くのグルマンたちを唸らせてきた『鮨 青木』は、先代からご子息の青木利勝さんがお店を継がれて27年。2021年には創業50年を迎え、銀座の老舗寿司店の系譜を威風堂々と育まれています。
江戸前ならではの肴と、
寿司店の新たな挑戦が、
今までにないハーモニーを奏でる
『銀座 鮨青木』のカウンターでご主人の青木さんが勧めるがままに酒肴をいただくことを想像してみてください。手間暇を惜しまず丁寧に仕事をしたネタが次から次へと、とびきりの口福を運ぶはずです。2021年のおせち料理は、まさに青木さんの江戸前の技を結集した三段重。一の重では、身がぎっしりと詰まった香箱蟹が5杯、伊勢海老・ウニ・トリュフの3つをバランスよくトリュフオイルで和えたもの、炙りばちこ、ソフトからすみ、ふぐ白子の桜葉巻を笹でくるんだものなど、豪華キャストが勢揃い。二の重には、コハダの酢〆や煮ハマグリといった江戸前寿司の粋を極めた逸品から、牡蠣のオイスターソース煮や甘海老の昆布〆など。三の重には黒豆のブランデー風味、あんきも最中など、寿司屋の垣根を軽々と超えた発想で作られた味がたっぷりと詰められています。
すべて丁寧に手作りされた宝石箱のようなおせちについて、青木さんに思い入れを伺ってみました。「子供のころから先代の手伝いをしていましたので香箱蟹は私の思い出ともつながっています。とても手間がかかっていますが召し上がる時は一瞬ですね(笑)。それが香箱蟹の贅沢なところで、今回は5杯と豪快に入れております。また炙り加減が難しいばちこは、こちらで炙って最上の状態でお届けします。黒なまこは、独特の食感と酸味を箸休めのように召し上がっていただけたら。伊勢海老・ウニ・トリュフの一品は、パリのレストランでいただいたオマール海老にインスパイヤされ、旅の記憶から生まれたお品です」
クラシックな江戸前の伝統の技と、寿司屋ではお目にかかれそうもないヌーヴェル酒肴ともいうべきスタイル。この両方をバランスよく組み合わせた三段重、これは『銀座 鮨青木』発のおせち料理新潮流と言っていいのではないかとさえ思うのです。
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コピーライター
近藤マリコ
Mariko Kondou
コピーライター、プランナー、コラムニスト。日本の古いコト・ヒト・モノに囲まれて育ち、その反動でフランス一辺倒となり渡仏を繰り返し、現在に至る。工芸・着物・伝統芸能、職人の世界観、現代アートや芸術全般、日仏文化比較、紀行文などのテーマを主に手掛ける。やっとかめ文化祭ディレクター。