ウォッチ vol.2
シーンごとにふさわしい時計の選び方
荻山 尚|編集者・著者
今回のNAVIGATOR
荻山 尚|
|編集者・著者
『レオン(LEON)』副編集長『センス(SENSE)』編集長をはじめ、数々の男性ファッション誌のエディターを歴任。クルマ、ファッション、時計などに造詣が深い。
編集者・著者
数々の雑誌を手がけ、車やファッションに精通していることで知られるエディター、荻山尚さん。生粋の時計好きで、小学生の頃、お年玉で百貨店の時計福袋を、17歳で〈タグ・ホイヤー〉のダイバーズ ウォッチを手にして以来、お気に入りの時計と人生をともにしてきました。全3回の連載を通して、そんなご自身の時計愛あふれるエピソードを交えながら、運命の時計との出会いをナビゲートしていただきます。
シーンごとに時計を使い分ける楽しみ
便利なスマートウォッチが広がっても、大切なシーンとなればアナログ時計を、という人は少なくないもの。たとえば商談時。スーツからさり気なく見える腕時計は、より“できるビジネスパーソン”を演出してくれますし、デートで訪れるレストランやバーでは、少し色香を漂わせる時計がムードを盛り上げてくれます。荻山尚さんナビゲートの連載第2回目は、そんな「シーンごとの時計選び」をテーマに、ビジネスに、デート、休日のアウトドア、ドレスアップしたパーティーにふさわしいおすすめの時計をご紹介します。
松坂屋名古屋店 北館5階
『GENTA the Watch(ジェンタ ザ ウォッチ)』
売り場面積約1200㎡。ラグジュアリーでありながらも開放的な雰囲気のなか、高級時計をじっくりと堪能できる空間に進化した『GENTA the Watch(ジェンタ ザ ウォッチ)』。国内外80を超えるブランドを展開し、フロア中心部に設けられた時計修理工房「ライブリペアゾーン」では、常駐する時計技師の作業風景を眺めることができます。
ビジネスシーンで光る時計とは
「名刺代わり」とも言われる腕時計。瞬時に時間が確認できるのはもちろん、社会人の身だしなみとしても評価されるものです。職種にもよりますが、ビジネスシーンにおいて良い時計を身につけることは一種のマナーといえるかもしれません。では、どんな時計がふさわしいのでしょうか? ビジネスパートナーとなる時計の見つけ方をご紹介します。
「誠実さ」を印象づける品のある一本を
ビジネスでの装いを完成させるのに欠かせないのが、腕時計。男性の場合、時計がなければ何か物足りない感じがしませんか? 同じスーツスタイルでも印象がけっこう変わると思うんです。最近は靴や名刺入れや時計に無頓着な人も増えてきましたし、スマホでも時間は確認できますが、たとえ言葉に出さなくとも、周囲の人は意外に見ているものなんですよ。名刺交換の際などにチラリと見える時計は、良いイメージを与えるのにうってつけです。プラスのイメージを印象づけられるなら、しない手はないですよね。仕事でいちばん大切なのは「誠実さ」。ビジネスシーンでは派手なものを着けたり、リッチさをアピールしたりする必要はありません。僕はこういう信頼できる人間ですよ、と伝えてくれる時計を選びましょう。
二針、三針のシンプルで美しいドレスウォッチを選べば間違いないでしょう。また、機構がついたタイプは、誠実さに加えてタフさも感じさせ、頼もしい印象に!タイはしなくていいけれど、スーツやジャケットは着るというようなオケージョンでおすすめなのが、パイロットウォッチを始めとするインデックスに多機能を備えた時計です。視認性が高く、正確性、タフさを備えているため、信頼性が高いんです。アクティブでありながらインテリジェンスを感じさせることができる時計だと思います。また、そのデザインがメカ好きな男心をくすぐるんですよね。
時代を超越したエレガンスを手元に
二針、三針のシンプルなドレスウォッチこそ、歴史に裏打ちされた洗練のデザインを選びたいもの。〈IWC〉は、1868年創業。世界でも屈指の高級時計マニュファクチュールのひとつです。この「ポートフィノ」は、コレクションの中で最もクラシックでエレガントだと感じます。控えめでありながら気品ある美しさが光ります。30年以上も愛されている時代に左右されないデザインは、ビジネスシーンにもぴったりです。ケースは45mmと存在感のあるサイズですが、あくまで優美。大きすぎるイメージは受けません。ローマ数字と目盛りを配した文字盤に、ミニマリズムを追求したスリムなリーフ針が表情を加えます。繊細なデザインの中に素晴らしい機構が組み込まれ、8日間のパワーリザーブも設計されています。
日本ならではの精緻、美意識、革新
名刺代わりに「僕はこういう人間です」と表すときに〈グランドセイコー〉は最適だと思います。ケースやメカニズムなど、すべてにおいて精緻で素晴らしいのですが、これ見よがし感がなく、地に足がついた誠実な印象を受ける気がします。自然や季節の移ろいからインスピレーションを受ける感性と「時の本質」に迫ろうとする匠の姿によって、日本の精神性を表現するマニュファクチュールで、20年以上かけて開発された独自のムーブメントもおもしろいんです。従来の機械式にクオーツ的なものを併せた世界的に見ても珍しい機構で、いうなればメカとクオーツのハイブリッドなんですよ。こちらは、ステンレススチールをベースに、18Kピンクゴールドとスポーティなセラミックスを併せたタイムピース。スポーツモデルのタフさを持ちながら知的、ゴールド使いの華やかさもありながら誠実な印象を醸し出してくれます。〈グランドセイコー〉は今、世界的に人気なので、海外出張にもいいですね。
シックながらも華やかなレディスウォッチ
女性のビジネスシーンにも、やはりムーブメントがしっかりしているものがおすすめですが、ベルトはブラックではなく気品あるブルーなどを選ぶと、少し華やかさが加わって特別な一本になるのではないでしょうか。〈オメガ〉はスポーティな時計のイメージが強いブランドながら、昔からドレスウォッチも出していて、とても綺麗なんです。僕も大好きです。36mmのスリムなケースの「デ・ヴィル トレゾア」は、純白のダイアルにベルトと同じブルーのローマ数字と針が配されたシンプルなデザインが魅力。両サイドの曲線に沿って描くようにダイヤモンドがセッティングされていますが、派手すぎることはなく、むしろモダンで知的な印象です。ムーブメントは、新しいクオーツ・キャリバー4061を搭載。特殊な鏡面仕上げのケースバックには、花が咲いたような「Her Time」のパターンがあしらわれているのも、心躍ります。
デートでつけたい時計
大切な人と過ごすデートでは、自分らしさをアピールしてくれる時計で、かけがえのない時を刻みたいもの。レストランやバーで、アウトドアで、パーティーで。それぞれのシチュエーションに合わせたい時計を選んでみました。
|シーン1|レストランやバーで愛を語るなら乾杯のシーンから絵になるインパクトを
ちょっといいレストランやバーでふたりで過ごす時間は、手元にも視線が集まるもの。センスの見せ所でもあります。どんなファッションに合わせるのか、相手はどういうタイプの人か、何回目のデートなのか、パートナーとの関係性などにもよるとは思いますが、いずれにせよ、少し艶のある、色気を感じさせる時計で、ムードを盛り上げるといいかなと思います。ハッと目を引くインパクトがあれば、会話の糸口にもなりますよ! その際はあくまで嫌味にならない程度のさり気なさを大切に。一緒に眺めて楽しめる、ハイクオリティで美しいデザインを選んでみてください。
ふたりの距離も縮まるアートなウォッチ
目を引く時計というと、複雑で洒脱な逸品の数々で知られる〈フランク ミュラー〉をまず思い出す人も多いのではないでしょうか。色鮮やかなインデックスが踊るように描かれた遊び心ある文字盤は、華やかなインパクトをもたらしますが、今回おすすめしたいのは、気品ある鮮やかなブルーとピンクゴールドで統一したこちらのデザイン。インパクトはあれどシックさも感じさせるので、何回目のデートにも適しています。よく見ると数字がランダムに並んでいることに気づくのが、デートにおける最大のポイント。この「クレイジー アワーズ」はなんと時針がジャンプして動くんです。その瞬間は感動ものです。卓越した技術力でこそかなう驚きの複雑機構に、パートナーも思わず顔を近づけてくれそうじゃないですか? しかも、見れば見るほど美しいアートなデザイン。時間は規則的に進むという固定観念から開放され、顔を寄せ合いながらの楽しいひとときを約束してくれます。
時を忘れ、この瞬間を楽しむために
レディスは、小ぶりで品と贅がある時計がいいのではと思います。スイスのマニファクチュール〈ジャガー・ルクルト〉の「レベルソ」は、1931年の誕生から気品ある女性を魅了し続けるタイムレスなコレクション。長方形のアイコニックなデザインにはさり気なく優美なアールデコ様式を取り入れており、機械式手巻ムーブメントを備えています。これだけでも魅力的なのですが、この時計の特筆すべき点は反転式ケースであること。「回転」という時計製造の歴史の中でも独創的かつ先駆的なアイディアが採用されているのです。くるりと反転させれば、3本の象徴的なゴドロン装飾を上下に配した裏面が現れます。ダイヤルを守るために生まれたケースですが、こうすることでブレスレットのような印象になりますし、デートのときには「今は時間を忘れて楽しみたい」という気持ちを表現することもできます。時計好きのパートナーならば、そのサインに気づいてくれるのではないでしょうか。
|シーン2|休日のアウトドアデートはラグジュアリースポーツでキメて
リラックスした雰囲気で楽しむアウトドアデートなら、なんといってもラグジュアリースポーツ!〈パテック フィリップ〉の「ノーチラス」などに代表されるラグスポは、もはや定番とも言えるトレンドですね。僕自身「大人が着けるにはカジュアルすぎるかな」と思うことがあるのですが、中身は本格的なアウトドア時計でありながら、カジュアルすぎないデザインがラグスポの魅力。車でいうとSUVのような、快適でありながらワイルドさも持ち合わせているイメージです。ファッションでもトレンドはスポーツ寄りになってきていますし、ビジネスでも使えるデザインが多いので、一本は持っていて損はありませんよ。
爽やかでタフなダイバーズウォッチ
休日につけるラグジュアリースポーツなら、特に海を感じさせるダイバーズ系は、爽やかさとタフさがあっておすすめです。〈チューダー〉はMy定番の見つけ方をご紹介した連載第1回でも“スポーティーだけれど誠実さがある”と名前をあげたブランド。この「ブラックベイ」は〈チューダー〉のダイバーズウォッチが持つ60年の歴史を集結したモデルです。スノーフレークと呼ばれるスクエアがついた時針、リベットブレスレットなど、ヴィンテージな雰囲気も魅力的で、再注目されているのでこれからますます評価が上がるでしょう。
愛らしさと機能性、海への情熱
アウトドアを楽しむときは、女性もやはりドレッシーすぎない、どこかスポーティなニュアンスのある時計を選ぶと、気分が高まりますよ。アリゲーターストラップのビビッドなピンクが印象的な「ルミノール ドゥエ ルナ」はそんなときにぴったりです。詩的なムーンフェイズを備えており、上品な印象ですが、実は38mmのユニセックスサイズ。タフネスとエレガンスが同時に堪能できるのです。ストラップのクイックチェンジができるので、付け替えて楽しむこともできますよ!〈パネライ〉は、創業当初からイタリア海軍と強い結びつきがあり、海への情熱を感じさせるブランド。本格的なアウトドアでなくとも、たとえば海辺のレストランに行くときにつけるのもおすすめしたいです。
|シーン3|手元もドレスアップしてパーティーへ!
華やかなパーティシーンでは、実は男性はシンプルなものをセレクトしなくてはいけません。そう、男性は女性をエスコートする側なのです! 特にブラック・タイ着用のクラシックなパーティーでは、男性の時計は銀色の丸型時計のみ。つまり、プラチナ、ホワイトゴールド、ステンレスのラウンドがマナーです。そして、女性は時計をしない方もいらっしゃいますが、ぜひともダイヤモンドきらめくドレスウォッチでパーティーを彩ってください。ブレスレットのようなタイプなら何にでも合わせやすいですし、カラーストラップなら、バッグの色を合わせたり、ドレスに使われている一色をセレクトしたりすると、洗練されて見えますよ!
洗練の輝きを放つ「ナポリの女王」
パーティーには、ドレスに合わせたアクセサリーをすることが多いと思いますが、もしこれぞ、というドレスウォッチをお持ちなら、時計に合わせてドレスを選んでみてはいかがでしょう。「クイーン・オブ・ネイプルズ」は、そう思わせてくれる一本です。1775年創業と長い歴史を誇り、1810年にナポリ王妃のためにつくられた初めての腕時計を手がけたブランド〈ブレゲ〉。そのデザインにオマージュを捧げるデザインが「ナポリの女王」と名付けられたこの楕円形の時計なのです。ホワイトエナメルダイヤルとベゼルとダイヤルのフランジに配された117個(約0.99カラット)のダイヤモンドに目を引かれますが、創業時からのデザインコードを継承しつつ、すべてにおいて洗練された輝きを放っています。ペールブルーのドレスを合わせたら、とても素敵だと思います。
今回は、ビジネスシーンに、デートにと、シチュエーション別にふさわしい時計の選び方をご紹介しました。ビジネスパートナーとなる時計をつけながらの仕事は、心強さも違いますし、デートのシーンに合わせて時計を着替えるのは、とても楽しいものです。ぜひお気に入りを見つけてくださいね。次回は、今こそ手に入れたい時計の数々をご紹介します。お楽しみに。
次回は7月下旬の更新を予定しています。
荻山 尚 TAKASHI OGIYAMA
東京都出身。青山学院大学を卒業後、商社勤務を経て雑誌編集者の道へ。20代は『Car Ex』『カーマガジン』など自動車雑誌に在籍。30代で『レオン(LEON)』副編集長『センス(SENSE)』編集長をはじめ、数々の男性ファッション誌のエディターを歴任した。ピッティ・ウォモやミラノのコレクション、国際試乗会などイタリア取材の経験も豊富。現在はフリーランスの編集者、著者として活躍中。プライベートでもファッション、クルマ、時計、食、旅を愛し、なにより家族を愛する1972年生まれ。
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