FLOOR DESIGN
CONCEPT
歴史に学び、
未来をつくる
リニューアルに際して、最初に思い浮かんだのは「原点回帰」という言葉。
400年以上の歴史ある松坂屋名古屋店が積み重ねてきたイメージをめくっていき、原点を見つめたときに浮かび上がる、時代に流されることのない大切な核をもとに売場空間を設計してきました。
この新しい売場はこれからの未来をつくり、 長く愛され、使い続けられるものを目指しています。
空間構成はより人が認識しやすく活動をうながすようなデザインとし、使われる素材は長い年月を経ても古びることなく、人に寄り添いながら魅力を発信し続けるものとしています。
リアルな売場でしかできない体験を生み出す魅力的な場としていきたいと思います。
- 永山 祐子Yuko Nagayama/ 建築家
- 2002年永山祐子建築設計設立。主な仕事に「LOUIS VUITTON 京都大丸店」、「豊島横尾館(美術館)」、「ドバイ万博 日本館」、「東急歌舞伎町タワー」など。
主な受賞に、JIA新人賞(2014)、山梨県建築文化賞、JCDデザイン銀賞(2017)、東京建築賞優秀賞(2018)、WAF(国際建築賞)2022 優秀賞(2022)、iF Design Award 2023 Winner(2023)など。
現在、大阪・関西万博での2つのパビリオン「パナソニックパビリオン“ノモの国”」「ウーマンズパビリオン in collaboration with Cartier」、常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH」などが進行中。
MATERIAL/ 素材
フロアの新しいキャラクターとなるのは、落ち着きがあり上品さが特徴の“銅”と、柔らかさと重厚さを持つ“真鍮”。
このふたつの素材は、百貨店として松坂屋が建設された明治時代の建築物の屋根や装飾品などに多く使われていた素材です。時間の経過とともに味わいが増す特性を、時を経て輝きを増していく松坂屋の未来に重ね合わせています。
SPATIAL DESIGN/ 空間デザイン
印象的な空間デザイン
リニューアルフロアは共通して、エスカレーター周りはオーバル形に仕上げています。
“銅”と“真鍮”をそれぞれ“大津通側”と“久屋大通側”とに分けて使用することで、フロアを回遊しながらも自分の居場所を認識しやすい空間構成すると同時に、館の縦の動線を強調する役割も持たせた空間デザインとなっています。
インターナショナルブランドが一堂に会する本館3階は、フロア中央のシャンデリアがアイコンに。繊細なチェーンで構成されたシャンデリアは求心的な空間をつくりだします。
等間隔で設置されたオリジナル照明は、昔の松坂屋の建物写真からもうかがえる、金属製の装飾照明を現代的に再解釈したものになっています。
日本発のコンテンポラリーなファッションやライフスタイルのブランドを中心に展開する本館4階を象徴するフロア中央は、一つの柱から放射線状に広がるような構成で、大きな木の下にブランドが集まる空間となっています。
本館3階と共通形状のエスカレーターのオーバルエリアも、仕上げを変えることで異なる表情をみせています。
エスカレーターを降りた瞬間から通路、展示空間分け隔てない一体的なギャラリー空間として、どのような展示にも対応できるフレキシブルな設えとしています。その中に各展示空間が緩やかに仕切られ、回遊して自由にアートを楽しめるような空間構成となっています。
アートカフェ(ユニイク)には植物がモチーフになっている壁画と立体作品、さらに生の植物が一体的に配置しています。ギャラリーと一体化し、ゆっくりくつろぎながらアートを身近に楽しめる場所となっています。
人々が気軽に立ち寄り、賑わいの生まれる場所を目指した北館地下1階。
暖簾をモチーフとした環境デザインには間接照明が仕込まれ、照明を切り替えることによって昼夜でフロアの雰囲気を変化させます。
また、伸びやかな印象の間接照明が空間の一体感を演出しています。