Vol.43 KIMONOー動物模様|松坂屋史料室
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衣 裳後期展示雛形本通期展示裂前期展示後期展示芙蓉に猫模様帷子(江戸後期)紫色の縮緬地に右裾から両肩に向かって立ち上がる南天の立木と、裾には愛らしいひな鶏と見つめる親鶏が、金糸と色糸による細かい刺繍により表されています。南天は、「難を転ずる」に通じることから縁起の良い木、幸福を招く木として親しまれてきました。葉の一部が友禅染と型鹿子で表現されています。紫色の絽地に糊防染による白上げや、多彩な色糸の刺繍によって表された鮮やかな芙蓉の花に、白糸の刺繍で表された猫の帷子です。身頃の裾に見える猫は、その尾が柔らかそうな長毛で表されており「唐猫」を思わせます。絹糸を緻密に刺繍することで表現されています。中国で吉祥図とされる「耄耊富貴図」は猫・蝶・牡丹が組み合わされており、本作品はその画題を意識したものと考えられます。紫色の絹縮地に、咲き乱れる水仙と、その周りで仔犬たちが駆け回っています。粉雪と水仙は白上げによりますが、水仙には金色や色糸で彩りが添えられ、雪輪も金糸と白糸で刺繍されています。仔犬は白・黒・茶の色糸による刺繍です。肉厚の刺繍で絵画的に表された仔犬たちは、うっすら積もった春の雪、落ちてくる粉雪、それをものともせず、旺盛な生命力を感じさせます。 雛形本とは、流行の小袖模様や意匠を描いた木版刷りの冊子です。寛文期(1661~73)以降、江戸中期を最盛期として数多く刊行されました。江戸時代のいわゆる「小袖の見本帳」である雛形本は、小袖の背面図を中心に、文様や技法、配色など記すのが一般的な様式でした。出版された総数については諸説ありますが、再版を含むと200種類弱ともいわれています。松坂屋はその約半数を所蔵しており、コレクションとしては最大級です。仲むつまじい夫婦に例えられるおしどりが色鮮やかな糸で繊細に刺繍されています。波模様は、青海波文様。古くから吉祥文様のひとつでもあります。本作品は、関東の芸能通で知られる小川萬亀庵旧蔵の織物裂です。雪持ち南天に鶏模様小袖(江戸後期)「納戸綸子地青海絞鴛鴦模様」小袖裂(江戸中期)「黒地竹屋町裂花兎模様」刺繍 織物裂(江戸中期)雪持ち水仙に仔犬模様振袖(江戸後期)流水を背景に、芦の叢にひそむ翡翠を友禅染で表した小袖です。翡翠は水辺に住む美しい鳥で、頭部から体の上面は青緑色です。濃い萌葱色の地に白上げを基調とし、藍と紅で彩色して芦を表現し、翡翠は浅葱と茶の色糸で刺繍されています。平面的な友禅染に、微妙な凹凸のある刺繍が浮き立ち、小さいながらも翡翠の存在が引き立てられています。五所紋には、三階松が据えられています。芦に翡翠模様小袖(江戸中期)(動物模様=翡翠)※萌葱色・・・平安時代から用いられた色名で萌え出る葱の芽のような緑色のことです。雛形 西川夕紅葉享保3年(1718)(動物模様=猫)(動物模様=鴛鴦)※綸子地・・・経糸、緯糸ともに無撚りの生糸を用い、模様を裏組織で織り出した柔らかく光沢に富む絹織物です。   (動物模様=兎)(動物模様=鶏・雛)※友禅染・・・糸目糊を使って模様の輪郭をなぞり、隣り合う色が混ざらないように防染したあと、絵画のような模様を手描きで染め上げる技法です。日本の代表的な染色方法の一つです。(動物模様=猫)※絽地・・・透目(すき間)を生じさせた盛夏向きの織物。(動物模様=犬)※絹縮地・・・経糸に撚りのない生糸を使用し、緯糸には糊付けされた強い撚りのかかった糸を使って平織し煮沸し縮めた布面に細かな凹凸の縮緬シボを出した絹織物です。せいがいはきれきっしょう花と兎を組みあわせた「花兎模様」が盛んに用いられるようになったのは安土桃山時代の頃です。当時、京都の豪商として有名だった角倉了以が愛用していたという図柄は「花兎金襴」と呼ばれます。金襴風の竹屋町刺繍で、兎の顔の緻密な表現が織物ではなく刺繍だということがよく解ります。本作品は、洋画家・岡田三郎助(1869~1939)愛蔵の織物裂です。すみのくらりょういはなうさぎいとめのりくさむらゆきわきぬちぢみもえぎさんがいまついつところもんあさぎねぎもえぎぼうてつふうきずちりめんからねころふようかたびらおしどりかわせみりんず

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