Vol.30 四季の美—秋の模様|松坂屋史料室
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雛形本雛形本とは、流行の小袖模様や意匠を描いた木版刷りの冊子です。寛文期(1661~73)以降につくられ、江戸中期を最盛期として数多く刊行されました。江戸時代のスタイルブックとでもいうべき小袖雛形本は、小袖の背面図を中心に、文様や技法、配色などを記すのが一般的な形式でした。出版された総数については諸説ありますが、再版を含むと200種弱ともいわれています。松坂屋はその約半数を所蔵しており、コレクションとしては最大級です。前期展示衣 装帯ねぎ滝に紅葉扇模様小袖 (江戸中期)たきかた かの こちり めん じもみ じ おうぎ も よう こ そでもみ じ も よう こ そで紅色の縮緬地に滝水、紅葉に扇面を散らした小袖。流れ落ちる滝と紅葉を絞り染めで表し、刺繍と型鹿子で紅葉の葉や扇を表した華やかな小袖です。(秋模様=紅葉)※型鹿子とは、型紙を置き、刷毛で染液を摺ることによって、鹿子絞りのような模様を付ける技法。幔幕に紅葉模様小袖 (江戸中期)まん まくう こんさ や じき じょうろこ鬱金色の紗綾地に色糸・金糸の刺繍、友禅、型鹿子により幔幕と紅葉が描かれた小袖。裾から肩にかかる幔幕と色づく紅葉は、源氏物語を示す代表的なモチーフで、「紅葉賀」巻の場面を表しています。(秋模様=紅葉)折枝模様 かずら帯 (江戸前期)おりえだも よう白色の綸子地に、色糸の刺繍により枝菊が描かれたかずら帯。かずら帯とは、能の女役の髪の上から鉢巻のように締めて後ろで結んで垂らす細長い帯のことです。植物の模様が表されることが多いですが、鬼女の役には三角形を連続させた鱗模様も用いられます。(秋模様=菊)菊に紅葉模様 小袖裂 (江戸中期)きく もみ じ も よう こ そで きれ萌葱色の縮緬地に菊と紅葉が表された小袖裂。白上げと、色糸・金糸の技により菊と紅葉が描かれた友禅染の小袖裂です。(秋模様=菊・紅葉)※鬱金色とは、鬱金草の根で染めた色をさし、赤みを帯びた鮮やかな黄色のこと。※紗綾地とは、平織りの地に綾織りで文様を織り出した光沢のある絹織物。※萌葱色とは、平安時代から用いられた色名で萌え出る葱の芽のような緑色のこと。楓樹模様小袖 (江戸中期)ふう じゅ も よう こ そでこい もえ ぎへい けん じ濃萌葱色の平絹地に楓樹が描かれた小袖。白上げを施した後に友禅染と刺繍により、大きくうねりながら枝を広げる楓樹を表した秋にふさわしい小袖です。(秋模様=楓樹)※平絹とは、表面に凹凸がない平織りの絹織物。無撚で織るので風合いが柔らかいのが特長。※白上げとは糊防染や絞りなどで、模様を白く表す技。芦刈模様小袖 (江戸後期)あし かりもんちり めん じちり めん じりん ず じぼうおくあし も よう こ そで紫色の紋縮緬地に水辺の芦と雁を表した小袖。裾に茶色の刺繍により描かれた、草ぶき屋根の茅屋と笠が貧しい農夫の存在を暗示させ、笠の下の金糸の鎌は農夫の仕事が芦刈である事を示しています。芦が刈り取られる晩秋の景で、謡曲の「芦刈」を想起させる模様でもあります。(秋模様=芦刈)※紋縮緬地とは、平織りで表面に凹凸がある絹織物の縮緬地に地紋(文様)を織り出したもの。後期展示後期展示西川雛形享保3(1718)年(秋模様=すすき・鈴虫) にしかわひながた雛形 西川夕紅葉享保3(1718)年(秋模様=菊・もみじ) ひながた にしかわゆう もみじ裂 地
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