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釘町 彰 展 光、距離、時間

釘町 彰 展

光、距離、時間

2025年1月29日(水)→2月4日(火) 営業時間:10時〜19時 ※最終日は16時閉廊

光・距離・時間

ルネサンス期の風景画を体系化したとされるアルベルティは絵画は窓であると言いました。
また、20世紀の美術理論家ロザリンド・クラウスは著書『オリジナリティと反復』の中で、抽象絵画においても窓の概念が入っていると指摘しています。
「窓」はまた内界と外界を結ぶ「膜」であると捉えることもできます。
思えば窓としての絵画はまさに内界と外界、つまり自身の精神と、時間によって刻々と変わっていく外の風景とを結ぶ媒体であると言えるでしょう。そしてそれは自身の心を映す鏡でもあるのかもしれません。

私はこれまで「光」「距離」「時間」この3つのコンセプトを柱に制作をしてきました。
絵画であれ、映像や彫刻、インスタレーションあるいは彫刻であれ、また様々なモティーフが用いられていても作品全てには共通にこれら3つの全てが入っています。そしてこの3つの要素は前述の窓の性質と関わっています。
また、さらに言えば、外界と内界を繋ぐ境界線である窓=絵画を見ると言うことは、私たち自身と世界との関係、世界を前にした人間の立ち位置を捉え直すことであり、そして現在の関係性だけでなく、過去、また同時に子々孫々と続いていく私たちの未来へ想いを馳せることに他なりません。

現在、世界を見渡すと、私たちは混沌としたいわば曇りの中にいると言わざるを得ない状況にあるように思えます。誰もが真理から目を背け、都合の良い解釈と欲望の迸る情報の中で先を見据えずに短期的な快楽に狂乱しているように見えます。進化しないどころか退化している所作にすら見えます。
「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」とフランスの人類学者は言いましたが、人間以前、そして人間以後に想いを馳せることは、私たちの立ち位置や立ち振る舞いを改めて問うことになるように思うのです。
私は人間の所作を超えた、自然から受け取った恩寵である天然の岩絵具や貝殻、砂を使って絵画を作り、その絵画を見る人が小さな粒子の中にも人間の一生を超えた何かの痕跡、あるいは兆候を見出すことができるのであれば、それは生きていることと同様、奇跡的で意味のあることなのだと思っています。

釘町彰

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「Bifröst(blue)」 12S

略歴

1968年
神奈川県生まれ
1993年
多摩美術大学美術学部絵画科日本画専攻 首席にて卒業
瀧富士美術賞受賞
1995年
同大学大学院修士課程絵画科日本画専攻修了(松尾敏男氏に師事)
パリへ移住 マルセイユ国立美術学校 在籍
1999年
パリ第8 大学大学院修士課程修了
2000年―
2002年
文化庁海外派遣芸術家としてパリに継続滞在
2006年
マルセイユ・フランス国立美術学校 特別講師

※諸事情により営業時間など変更になる場合がございます。詳しくは、アプリまたはホームページにてご確認ください。

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